実践報告◆ 1

手作りソーラーボートの製作

―「’98柳川ソーラーボート大会」への挑戦―

福岡県立久留米高等技術専門校 メカトロニクス科

新東 勇・伊豫雄二・椛嶋秀明・肥山繁雄

1.はじめに

 現在のエネルギ源は石油,原子力,水力等が中心であるが,石油を中心とするエネルギ依存の問題や昨今の地球環境問題などで,新エネルギの開発・研究が広く実行されているが,現状では石油中心のままで推移せざるをえない状況である。

 このような状況の中,新エネルギ技術として太陽(ソーラー)エネルギが注目されている。このソーラーエネルギについての研究・開発に関しては多くの企業で実施され,さらに,その普及活動・技術者育成を目的として,各地でソーラーをエネルギ源とした種々の催し(ソーラーカー等)が実施されている。

 本校でも環境問題やエネルギ問題など考慮し,ソーラーをエネルギ源とした船づくりをとおして,物づくりの楽しさ,それに関する技術・技能習得,および団体生活について学ぶために,「’98柳川ソーラーボート大会」に参加した。

 以下,このことについて報告する。

2.柳川ソーラーボート大会について

 ソーラーボート大会が実施される柳川市は,福岡県南部の都市で,明治の詩人“北原白秋”の誕生の地であり,市内を掘り割り(クリーク)が網の目のように巡り,のどかな田園風景をとどめる水郷の町である。この掘り割りの一部を利用し,平成8年度から8月上旬の2日間にわたり「ソーラーボート大会」が実施されている。その概要は,次の規定1と2である。

2.1 規定1:ソーラーボート製作に関する主なる条件

① 推進エネルギは,ソーラーパネル100W以下(気温25℃)と蓄電池(12Vを4個,船には最大2個まで搭載可能)であるので,風力などは利用できない。

② 動力(電気モータ)の個数は制限なし。

③ 電源非常停止装置や曳航用ロープの設置など,安全対策を十分に行うこと。

④ 船体は自作,既製品の別は問わない。ただし,完成品で長さは4m以内(スクリューなどを含む),幅は1.5m以内,高さは水面上0.5m以内,水面下0.5m以内(モータ,スクリューなどを含む)である。特に高さに関しては,ドライバーが乗船した状態での数値である(図1参照)。

⑤ 駆動方式は船内機(船内にモータ,スクリューは水中),船外機(モータ,スクリューとも水中)いずれでもよいが,船内機は開催前日の船体検査が必要にネる……船舶4級に相当。

 以上が船体についての主な規定である。

2.2 規定2:競技内容

① 第1日

 ・周回レースの予選:1周(約3.1km)のタイムレース。上位25艇と推薦5艇の計30艇が翌日の周回レースに出艇できる。

 ・スワロームコンテスト:150mの区間に一定間隔で設置されたブイをスワロームするタイムレース。

② 第2日

 ・周回レースの決勝:3周(約9.3km)のタイムレース。

 ・フリースタイルコンテスト:70mの区間をBGMに合わせて1分30秒で走行し,走行時間の正確さや操船技術,演技力などを競い,点数はポイント制である。

 それぞれに,ポイントが与えられ総合ポイントで順位を競う。また,周回レースとスラロームコンテストに関しては,特に学生部門がある。

 以上が柳川ソーラーボート大会の主なる規定と競技内容である。

 主催者の説明では,標準的な船で2個のバッテリのみで走行すると,約1周半程度しか走行できないよう設定されている。周回レース決勝では,3周のうち1回しかバッテリ交換ができないので,抵抗の少ない船の形状,効果的なシステムとモータの選定,併せてソーラーパネルをいかに効率よく使用するかが早く走るための条件である。

3.設計・計画について

 メカトロニクス科の2年生の学習として取り組んでいるので,効率的に行うために,

① 船体設計および製作班

② 操舵および駆動設計および製作斑

③ 制御部(電気回路)の設計および製作斑

の3班に分け,それぞれに班長を決め,グループ内の活性が図れるよう留意した。さらに,定期的に必要に応じて会議を実施するようにした。

 さて,本科は柳川ソーラーボート大会に平成9年度(第2回大会)から参加しているので,前年の結果を踏まえ次のように基本計画をまとめた。

① 上記の3班に関する工程表の製作

  製作完了しても完成度は50%で,調整・改善が必要であることを説明したうえで,開催日平成10年8月1,2日に合わせて作成。

② 本校をPRする船体名は昨年と同じ“となりのメカトロ”とする。昨年ベストネーミング賞を受賞した由緒ある名前?である。

③ モータ,ソーラーパネルなどを除きすべて自作品とする

④ 船体は,前年度は発泡スチロールを主体に製作したが,経験不足か予想外に大形重量化したため,本年は化粧ベニアとFRP(ガラス繊維強化プラスチック)で船体を製作することとする。

  また,搬送の点も考慮して全長3m,幅0.6mとコンパクトで軽量の船体を製作することを目指す(完成した船は写真1参照)。

⑤ 船体の製作にあたり,図面の1/4スケールのモデルを作成し水に浮かべ,状態を検討し浮力計算の係数を修正し,実物大の製作に対応できるようにした。なお,船体を作るに参考となるフローチャートと計算式は図2のとおりである。

⑥ エネルギ源のソーラーパネルは,船体のサイズから1枚とする。1枚の能力は45W(15V×3A)である。

⑦ 制御回路は,前年度はZ80CPUとPWM制御方式でDCモータを駆動する方式で作成したが,予期せぬ事態が生じた。本年はパワートランジスタに余裕を持たせ,無安定マルチバイブレータによるPWM方式に変更した。外付け可変抵抗器の抵抗を変化させ,パルス・デューティ比を変えることでDCモータの回転数を制御する方式である(図3参照)。

  モータは,DC12V仕様の船外機(モータとスクリューが一体品)で,スクリューは標準品φ300mmをφ250mmに形状加工し,回転数中心に考えた。

4.製作について

 前記のスタッフ構成と基本計画に基づき,全体形状,部品図の作成,購入品の手配,そして各チームの横の連絡を密に作業を開始したが,思うようには進まず何度も会議を行う結果となった。特に,船体の製作と操作システム,それに付随する種々の部品の設計製作のやり直しが大変であった。

 具体的には,駆動と舵取りをいかに解決するかであった。船外機はモータとスクリューが一体となっているので,基本的には舵は必要ないが,回転性を重要視すると舵を別に設置したほうがよいのであるが,当然システム部品が多くなり重量化の原因になるので,結果として舵なしで対応することにした。

 また,船体を実際に水に浮かべ,走行させ浮力や安定性を検討すると,浮力は十分であったが左右の安定性がとれず,その対策として抵抗が大きくなるが,左右に発泡スチロールでフロートを取り付け,安定性を高めることにした。

5.ソーラーボート大会

 ’98(第3回)大会の第1日目は,日は時々差すが曇り空のもと開催され,出場艇は67艇で,全艇その能力を出しレースを行った。

 わが“となりのメカトロ号”は,周回レース予選では,途中モータと船体の間に小枝がからむというアクシデントにもかかわらず,念願の1周完走ができたが,翌日の決勝レースには出場はできなかった。予選1位の船は,1周3.1kmを13分08秒のハイレコードで走破した。まさに,F1カーと市販車の違い,ライオンと猫の違いである。スワロームコンテストも操舵性能不足とモータ馬力不足で,満足のいく結果が得られなかった。

 第2日目は,あいにくの雨天のなか開催され,周回レースでは前日の予選上位チームがそのまま上位を占める結果となった。フリースタイルコンテストのときは雨もあがり,“となりのメカトロ”号は竹細工で骨組みを作りその上に色づけをほどこし,ポイントとなる目にはパトライトを点灯回転させ“となりのトトロ”を演出した作品(写真2)で挑戦し,15位の成績を得ることができた。

 しかしながら,周回レースの船の速さの現実をみれば,いずれは「このレベル」までと高い目標はできたが,いかんせん技術力やあらゆる点で差は歴然としている。やはり,決勝戦へ出場するには,抵抗の少ない船体と効率のよい馬力のあるモータが必要である。

6.ま と め

6.1 となりのメカトロ号の仕様

 ・縦×横×高さ=3000×600×400mm

 ・重量:約50kgf

 ・乗員:1名

 ・エネルギ:バッテリ12V×2個+ソーラーパネル1枚45W

 ・モータ:水中モータ12V(型式:M-15)×1個(スクリューとも)

 ・制御方式:パワートランジスタモジュール+PWM方式

 ・操舵方式:ワイヤ駆動方式

6.2 レースの結果

 周回レースの予選,スワローム,フリースタイル等をまとめた総合順位は30位であった。

 また,周回レースの記録から求めた速度Vと前述の式で求めた速度Vを比較すると,ほぼ近いデータを得ることができた。

6.3 ソーラーボート大会に参加して

 ソーラーボートそのものに関して気づいたことを羅列すると,

 ・船体は安定性との関係もあるが,正面からみて断面積(抵抗)は小さくすること。また,船の全長は長いほうが有利であると判断される。

 ・駆動方式では,周回レースでは船内機(モータを船内)が有利であり,スワロームレースでは船外機が有利である。

 ・ソーラーエネルギ,蓄電池のパワーをロスなく効率的な制御方式を確立すること。また,パワートランジスタを使用するなら発熱対策が必要である。

 ・モータ仕様に合う,形状やピッチなどを考慮した効率のよいスクリューを製作すること(柳川市内のクリークは川藻があり,これがスクリューなどにつくと速度が落ちる)。

などである。

 また,本来の目的である点については,

 ・部品加工に関する技術技能を習得することに成果があったこと。

 ・クラスにまとまりができたこと。

 ・物づくりの楽しさを理解できたこと。

 ・よい意味での競争心が芽生えたこと。誰も人の後塵を拝することをよしとする人はいないから。参加するからには勝ちたいと願うのが人の常である。

などで頭書のとおり目的を達成できたと思う。

 なお,学生は毎年代わるので,技術・技能の伝承ができるよう,図面,写真や記録などの整理が確実に実行できるようにすることが大切である。

 最後に,メカトロニクス科の名に恥じないよう,バランスのとれた夢のあるソーラーボートを作り,学生が表彰台に立てるような指導をしていきたいと思っている。

〈参考文献〉

1)’98柳川ソーラーボート大会パンフレット.

2)’98柳川ソーラーボート大会レギュレーション.

3)ソーラーボート製作教室パンフレット.