企業訪問記

「北陸工業株式会社」を訪ねて

福島県立浜高等技術専門校    渡邉 昭一

1.はじめに

 今回訪問する企業は,新潟県の中心地域である南蒲原郡栄町にある鋳造業として日本でも有数の古い歴史をもつ,「北陸工業株式会社」である。

2.会社概要

 北陸工業株式会社は,昭和2年に加藤精鍛所として三条市に創業し,昭和45年に将来の公害問題を先取りし,無公害企業を目指し三条市の市街地から現在地に移転をして,設備の合理化と大型化を図りながら鍛造製品製造の総合メーカとしての基盤を築いてきた。

 昭和51年にTQCの導入をし,資源,エネルギーの高騰と小ロット化に対応した体質改善を行い,昭和53年に建設機械メーカ㈱小松製作所の「小松品質管理賞」を受賞し,昭和59年には国内において,従業員の一番少ない企業にもかかわらず「デミング賞実施賞中小企業賞」を受賞し,国内の業界で話題となった。その後,平成10年にISO9002,平成11年にはISO9001の認証を次々と取得し,現在もISO2000年版に移項を終了しており,徹底して設計・製造・検査の工程における品質管理能力の向上を図っている。

 インドネシアにも㈱小松製作所と現地ユナイテッドトクラターズと三社で合弁会社を設立し,国際貢献の一端を担っている国内の鋳造業界における先駆的企業である。

3.主要製品について

 主な製品の比率は,建設機械関係部品(50%),自動車関係部品(29%),農業機械関係部品(13%),産業機械関係部品等(8%)と鋳造業ならではの製品を全国トップといえる13,000点余り,多品種小ロットの生産を行っている。

 特にクランクシャフト,カムシャフト,ギヤ等鍛造による製造技術は,目をみはる伝統技術の粋をきわめていることに驚いた。

 インドネシア工場においては,建設機械に使用されているリンク(移動用機械の部品)の専門工場として26種類の製品を月産30万個を4班3直体制で年間稼日数330日という建設機械部品製造を行っていることをお聞きして驚いた。

 中国はこれからの市場とよくいわれているが,建設機械の需要も同様であることをよく理解することができた。

4.各部門における主な生産設備について

(1) 金型製作部門

  ・総合CAD/CAM/EOAシステム  1式

  ・自動プログラミングシステム  1式

  ・マシニングセンタ        2台

  ・NC旋盤        3台

  ・NC放電型彫機    1台

  ・オートミラ      1台

  ・プラノミス      1台

  ・倣いフライス    3台

  ・立てフライス盤  4台

  ・旋盤型削機      9台

(2) 切断部門

  ・ビレッドシャーリングマシン  6台

  ・高速バンドソー  10台

(3) 鍛造部門

  ・フォージングプレスライン   

        (2500t×1,1600t×2,1000×1)

  ・エアスタンプハンマ

       (8t,6t,5t×1,3t,1t×2)

  ・ラスコ油圧ハンマー(1.7t×1)

  ・セコドロップハンマ(6000p×1)

  ・ハイスピードハンマ(N500P,N300P×1)

  ・トリミングプレス         13台

  ・油圧プレス(600t,500t×1)

  ・80t油圧矯正機  1台

  ・250tナックルジョイントプレス        1台

  ・重油バッチ式加熱炉        7基

  ・高周波加熱炉    5基

  ・重油自動回転炉  2基

  ・ガス自動回転炉  1基

(4) 熱処理・ショット部門

  ・自動連続焼入焼戻炉        1式

  ・自動連続焼準炉  1基

  ・台車式自動連続焼入焼戻炉    1基

  ・連続式鍛造焼入焼戻炉        1式

  ・ショットブラスト        5台

(5) 検査・出荷部門

  ・三次元測定機    2台

  ・磁気探傷機      2台

  ・超音波探傷機    1台

  ・衝撃試験機      1台

  ・引張試験機      1台

  ・硬度計            3台

  ・防錆機ライン    1式

 以上のように各製造部門において高品質の鍛造品を生産する工場を見ることができた。

5.ものづくりへの取り組み

 お客様が満足される製品の提供として全社をあげて,次のような取り組みをしている。

 ・ユーザニーズの把握と積極的な鍛造化の提案

 ・次世代の製品のあり方を追求した技術開発

 ・品質,コスト納期の最適条件を求めた金型設計と金型製作

 ・立上がり段階から品質保証された工程での品質,コストの作り込み

 また,活力ある職場づくりとしては,

 ・QCサークル大会

 ・中期経営計画『555(全社員による目標):アタックスリーファイブの推進』

   5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)

   5げん(原理・原則・現場・現実・現物)

   5%の利益

 ・安全教育

 ・入社時教育

 ・朝礼時に課長から安全指導

 ・月一回の社長セミナーの実施

 ・チーム(5人)による作業が多く,作業環境上話ができないのでサインの徹底

 ・安全委員会(会社側5人,組合側5人計10人で構成)によるパトロール,予防管理の徹底の実施,5Sの徹底,KYT,TBMの徹底を会社の法律とし,危険性の高い職場での作業中の怪我防止を徹底的に図っている。

6.人材育成

 北陸工業における従業員の人材育成については,

 ・社員に目標を与える

 ・デミング賞,QC大会,ISO対応

・鍛造業界独特の技術である金型(鋳造は100分 

 の1.5mmの精度,材料の縮のノウハウ等設計に 

 生かす)加工の伝承

 ・よそに負けない人作り

 ・チームによる製造意識の徹底

をはじめ,早出による加熱炉(就業前(30~60分)を当番制により火をいれるなど人作りの面においても,社員とともに工夫をほどこしていることが十分に理解できた。

7.おわりに

 私は,鍛造工場というものを今回初めて見学したが,加熱して真っ赤になった鉄を大型ハンマーで叩いて高精度,高品質の製品を作り上げる様を見て,日本におけるものづくりの一端を見ることができた,大変有意義な企業訪問だった。

 お忙しいなかを説明,案内していただいた五十嵐正直社長,金山一広総務部長に感謝申し上げます。

8.参考用語について

(1) ISO:国際標準化機構

 (International Organization for Standardization)

(2) ISO9000シリーズ

 製品の設計・製造から検査までの一連の工程での品質管理能力を品質システムととらえて,これを認証するために必要な事項を規格化したものが,国際標準化機構(ISO)のISO9000からISO9004までのシリーズ。各規格は,商品の性格やユーザとメーカの立場,要求の程度に応じて,使い分けられる。現実には企業などの品質システムを審査する機関が必要であり,さらにこれらの審査機関,審査員を認証する公平な機関が必要になる。

(3) デミング賞

 アメリカの統計学者デミングが提唱した,工業製品の品質管理向上に貢献した個人,企業に与えられる,日本科学技術連盟が制定している賞のこと。