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「学習内容,学習期間そして学習場所」

リガテック特許商標事務所 北岡 敬三

1.はじめに

 私たちは,なじんだ教育体制のもとに自分の子どもを学校や学習塾にせっせと通わせて学習をさせてきました。学校や学習塾で主に学習した内容は,教科書や基本書に書いてあることの記憶とその記憶の再現でありました。

 しかし,日本の現状は停滞気味である一方,世界の流れの変化は激しくなっているのが現実です。このため,私たちは子どもに教育を受けさせる際にはこれまでのやり方ではいけないと感じ始めています。

2.学習内容

 このところ私は,小学校,中学校,高校の区別なく,学校教育での科目は,図1に例示するような,①生活に必須の科目と,高度な学習に必要な②基礎科目,そして創意工夫と個性を育てるための③応用科目がうまく組み合わされておらず,実社会に役に立つ実践的な動的な授業ではなく,従来古くから行われている教科書中心的な静的な授業であると,強く感じています。

① 生活に必須の科目とは,例えば社会生活に必要な社会制度の話,税金の話,権利義務の話,道徳観の話,健康の話,算数の話,国語の読み書きの話,英語の話,歴史の話,社会福祉の話,もの作りの話,人間と宗教の話,政治の話などです。

② 高度な学習に必要な基礎科目とは,例えば数学,物理,化学,電気電子,機械,外国語などです。

③ 応用科目とは,例えば先端技術を支える技術と技能,討論の仕方と要領,論文の書き方,富の社会と貧の社会,ナノテクノロジー,宇宙工学などです。

 そしてもっと重要なことは,各科目を学ぶ必要がある理由が学習者に知らされておらず,各科目相互間の関係もきわめて不明確であり,教師側もその学習する必要がある理由をよく理解しておらず,学習者に対する説明が欠如しています。つまり,現時点での各科目の編成は従来の慣例に従って適当に組まれているかだけではないかと思います。

 例えば,ある資格を取得するための学校では,ある科目を教える前に,この科目を学習する意味と,ほかの科目との関係,および実社会ではどのように使えるのかを,学習者に説明をします。しかも徹底した基本的な教育と今後の復習をやりやすくするために,その科目の基本書の選定には,かなり注意を払っています。特別な分野でない限り基本書は必ず提示し,従来のような適当に板書して伝えるだけの授業はしません。

3.学習期間

 このところ,大学4年生は少し前の時代の高校3年生の精神レベルと学力であり,大学院修士2年生が少し前の時代の大学4年生の精神レベルと学力であると言われ始めています。私もそのように思います。この理由としては,大学生は携帯による通信やパソコンによる会話に気力や能力が取られており,以前のように友達との間で人生,勉強,仕事のこと,あるいは結婚,就職などについて将来を直接語り合うことが非常に少なくなっていることと,親と子の間での会話がないことも多く作用しています。若いなりに物事についてある程度深く考えるクセがついていないからでしょう。このため,若者の精神的な面が数年分低年齢化していて,経済的にも自立できる時期が20歳前半から30代に先延ばしになってきているのです。

 これは核家族化と高齢化現象に無関係ではありません。高齢化が進み,20年も30年も長寿命になると,なにも20代前半で独立して生計を立てる必要性というか危機感がなくなってきたのです。一方では,経済の構造的改革と外国勢の躍進に伴い,日本の技術力と経済力は相対的に大きく低下しており,中高年だけではなく若者であっても特徴がなく特別な能力が乏しいと,若者であっても簡単には就職できなくなってきているのです。

 若者は,全く勉強をしない人のグループと,猛烈に勉強をする人のグループに分かれてきています。しかし,全く勉強をしない人が多くなってくると,国力は明らかに低下していき,技術力の優位性はなくなってしまいます。

 このような社会的背景から,私たちは,若者に学習意欲と将来の明るさをもってもらうために,若者への教育を行う際の学習期間と学習ルートを考え直す必要があります。若者に対する教育課程を従来の概念にとらわれて一律に考えてしまわずに,例えば図2に示すような学習期間と学習ルートのタイプ分けができるかもしれません。

① 高校課程,大学課程,大学院課程を一気に通過して学習するタイプ。この場合には,学年の飛び級を積極的に活用するのがよいでしょう。

② 高校課程と大学課程の間と,大学課程と大学院課程の間の少なくとも一方には,社会経験をする課程を加入するタイプ。例えば高校課程を卒業した直後に介護実務を経験して,その後大学課程では介護士と看護士の養成課程に進学するといったことです。

③ 高校課程を卒業後一度就職して,さらに学びたくなったときには大学課程に進学するタイプ。この場合には,大学課程に進学する年齢には特に制限がないようにします。

④ 高校課程と大学課程も経てある種の職業に従事していて,その後全く異なる分野の職業にも従事したい場合には,再度別の大学課程に進学するタイプ。この場合には,再度進学した大学課程ではせいぜい1年~1年半で修了できるようにするとよいでしょう。

⑤ 中学課程を経て大学課程に進学したい場合には,原則として最小5年課程を経れば卒業できる制度にするタイプ。この場合には,中学課程の卒業であっても意志と目標が明確であれば,大学課程での勉強を認めるのです。

⑥ 高校課程を卒業して,海外の大学課程に進学して卒業した場合,さらに国内の大学課程に進学する際には,3年次入学を認めるタイプ。

⑦ 中学課程から専門学校課程に進学した場合,または高校課程から専門学校課程に進学した場合には,大学課程の2年次入学を認めるタイプ。

⑧ 大学課程の理工系を卒業した者は,医学部と歯学部の3年次に積極的に入学を認めるタイプ。これにより,いわゆる医学物理士のような専門職や高度医療機器の扱いに精通した医師の養成が容易になると思われます。

⑨ 大学課程の法学部またはローススクールを卒業した者は,医学部と歯学部の2年次に積極的に入学を認めるタイプ。これにより,いわゆる法医学や医療過誤あるいは医療ミスに対して法律的に対応し,これらの問題が生じないような対策がとれる医療専門家が育成できるようになると思われます。

4.学費

 学校へ行こうとする者にとっては,特に私立大学の学費はあまりにも高くなりすぎています。どの学部であっても,本当に必要な教育科目の選択と,優秀な教師と,そしてわかりやすい基本書の選択をして経費削減を行い,学ぶ者にとって学習意欲が起きるような学費にしなければなりません。

 例えば,教師の平均年齢を下げることも1つでしょう。競争の激しい私立の高校では,教員の平均年齢は下がってきているようです。また,これまで必要であると思われていた科目であっても,激動と変化の時代にあっては,本当に必要なのかどうかを吟味する必要があります。また,学費の納入の仕方は,今よりもより柔軟な制度にしてほしいものです。

5.学習場所

 学習する場所は,学校の本部だけではなく,一部の予備校や大学がすでに行っているように,サテライト教室を有効に活用する時代です。サテライト教室が使えることにより,大学の本部がどこにあるかはほとんど関係なく,学習が非常に便利になります。

 また,異なる種類の大学が協力し合って,これまでになかった学習コースを選択できるようにしてもよいでしょう。例えばある理工系大学の中に,文科系大学の経営学のサテライト教室を設けて,理工系学生が経営学をサテライト教室で学習できるようにすれば非常に便利です。

 さらに,国立,公立,私立を問わず,昼間と夜間のいずれの時間帯であっても,共通して同じ講座が受講できることが望まれます。この2つの条件があれば,かなり受講時間に融通が利くので社会人の学生が増えることでしょう。