職業能力開発技術誌 技能と技術 Vol.48 2013年4号 通巻第274号
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-43-若者達に伝えたい3.就職問題に関する私の主張   ・・自分の就職観を持とう 「学生達の就職活動は間違っている」,これは日頃からの私の主張です。このように主張する端的な根拠は第4図に示された離職率の高さです。「厳しい就職活動の末やっと得た職場を,自分で選び自由意志で決断した職場を,わずか3年以内に放棄するとは何事だ」というわけです。長年採用活動にかかわり多くの学生達と向き合ってきた経験から,その原因は学生達の就職観にあると思います。まず自分で考えた自分の就職観など持っている人は少ないか,持っていてもきわめて単純,幼稚だといえます。 学生達に「なぜ就職するのか?」と質問すると,「これまで親に養ってもらったので,これからは自分で働き食べていくため」と,いとも真面目に答える大学生は多い。この世界一豊かな国,飽食平和ボケとも思える日本社会で,最高学府たる大学を卒業しようという学生達が,起きている時間,つまり人生の大部分を,食うための働きに費やすというのでしょうか? これでは就職しても長続きしないでしょう。失業しても生活保護費さえもらえれば,食べていくことさえできれば,あえて就職などしないという人が居てもおかしくないでしょう。 ある経済新聞社が毎年調査して発表する,就職活動中の大学生達の就職意識調査結果によると,その80%前後の学生が,その就職条件の中に「面白い仕事ができる会社」を含めているという。これも就職して長続きしない原因の大きな部分を占めているでしょう。仕事は自己都合でするものではありません。いくら自分にとって面白く自己満足できても,顧客満足がなければ仕事をしたことにはならないということを忘れていないでしょうか? 就職を部活への入部と誤解していないでしょうか? 仕事とは本来自己都合で,自己満足のために行うものではなく,顧客都合に合わせ顧客満足のために行うものです。したがって自己都合だけで働くことを考える人にとって,仕事とは面白くないものだと思って間違いありません。だれかが面白い仕事を見つけて,そんな遊園地のような職場を提供してくれるなどということはないのです。つらいかもしれない仕事を面白くするのは自分の責任なのです。 近年,キャリアカウンセラーという資格を持った人達が多くなりましたが,いったい彼らはどのようなアドバイスをしているのでしょう? 第4図に示した状況は,この10年以上にわたってほとんど変わっていないのです。大人たちが若者達にアドバイスすべきことは,厳しい社会を認識させ,それでも挑戦していく勇気と希望,そして自分自身の就職観を持つために必要なヒントを提供することかと思います。 私は就職とは「学生から社会人になること」,つまり「これまで一方的に社会の恩恵を被って育てられ学ばせていただいた立場(Take only の世代)から,成長の過程で身に付けた自分の持てる能力を精いっぱい生かして,その社会の維持発展のために参画しながら,一方で自分の人生も楽しむ立場(Give & Take の世代)に変わること」だと考えています。 また学生達の就職行動を見ていると,毎年のことながら「安心安定」な就職先を求めて大企業,公務員希望者が多い傾向にあります。さらに最高学府で学んだ若者たちが,仕事をするために就職するというのに,「社内教育制度の充実」を就職条件に挙げているのも実に滑稽なことです。大学は学ぶところですが,就職は仕事をすることが目的であることに気づかせてあげなくてはなりません。 一方で,今や10年一昔の時代ではなく,ドッグイヤー,マウスイヤーと言われるほどに,環境は激動しています。今日ある仕事が明日もあるとは限らず,今日の最先端が明日は陳腐化の時代であり,今年好業績の会社が明日も好業績とは限りません。また,若いときの数年間,学校で専門的なことを学んだとしても,それで自分の一生が決まるはずがありません。学校で最優先に身に付けるべきは,決して最先端の知識や技術ではなく,社会にどのような変化があったとしても,そのなかで社会の一員として逞しく生きていくための基礎学力であり人間力でしょう。そのために,先ずはしっかりと学ぶことです。その上で就職に当たっては,どのような難問に

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