職業能力開発技術誌 技能と技術 Vol.49 2014年1号 通巻第275号
6/44

-4-技能と技術 1/20146.大学の使命 しかし,世界が簡単に真似のできない技術と口では言っても,それを実際に実行に移すのはそれほど簡単ではない。 大学の学長として強く思うのは,今こそ,中小企業と大学が共同で,技術開発に当たることが急務であるということである。 日本の中小企業には,ノウハウも含めて,高い技術力が蓄積されているが,その多くは,残念ながら眠っている状態であり,必ずしも有効活用されているとは言いがたい。その理由はいくつかあるが,主なものをあげると次のようになる。 1.元請けとのつながりが強すぎたため,自分たちの技術の重要性に気づいていない。また,その技術がいろいろな分野への転用可能ということにも気づいていない。 2.ノウハウや長年の勘に頼って技術開発を進めてきたが,十分な科学的根拠に基づいたものではない。 3.経営環境の厳しいなかで,なかなか後継者が育っていない,あるいは,後継者になることを躊躇している。 これら課題は,中小企業だけで解決しようと思っても,なかなかうまくいくものではない。しかし,いずれも,大学との連携で解決可能であると考えられる。 1については,もはや元請けとの主従関係は解消されている。むしろ,ビジネスチャンスを多方面に拡げるべきであり,そのためには,大学が持っているチャンネルを有効利用すべきである。また,大学教員は,中小企業が抱える技術が何に役だつかについてもヒントを与えられるはずである。 2については,まさに,大学が有する先端技術を活用すべきであろう。本学が行っている共同研究においても,中小企業が開発した加工技術の有効性が電子顕微鏡観察で実証されたことがある。「自分たちのやってきたことが正しかった」と,とても喜ばれた。自信にもつながったようである。 3については,後継者を身内だけに求める時代ではない。就職難といわれているが,いわゆる大企業は全体の0.3%にしかすぎないのに,新卒の多くは,ここに集中している。まさにミスマッチである。優良な中小企業に人材を送り出すのも大学の使命である。 ただし,中小企業との産学連携には課題もある。1つは,知的財産をどのようにとらえるかである。共同で特許を出願することも可能であるが,ノウハウとして公開しないほうがよい場合もある。しかし,大学にとっては,研究成果を外部に発表することも仕事である。この微妙はバランスには,企業などでの経験ある人材をコーディネータとして雇用し,仲介してもらうことも有効である。 もう1つの課題は,企業と研究室のマッチングである。多くの中小企業があるなかで,業種や抱えている課題はそれぞれ異なる。それを理解したうえで,共同相手として相応しい大学の研究室を選定しなければならない。 この点に関しては,コーディネータとともに金融機関,特に,信用金庫など地元密着型で中小企業の事情に明るい組織との連携も重要である。 最後に,このような共同研究は,自主予算でまかなえる場合もあるが,やはり,公的資金が必要となる場合も多い。日本が「ものづくり」の心を維持し,「ものづくり技術」によって国際社会での優位性を保つためには,大学と中小企業との連携が重要という視点にたったファンディングの充実なども必要であろう。7.ひとを育てる 日本が「ものづくり」で生きていくためには,なによりも,それを支える人材育成が重要である。志をもって,世のために貢献することを人生の喜びと感じることのできるひと。そして虚を排して,実を

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です